あずーるの雑多なログ(仮)

つれづれなるままに……

考察:補助艦艇と艦名

 宇宙世紀の世界には、級名は判明しているもののネームシップ以外の艦名がほぼ設定されない艦がいくつか存在する。多くは登場作品が少ないが故の弊害なのだが、明らかに登場作品数と艦名が明らかになっている艦の数が釣り合わない艦級がある。

 

 今回の考察でこれに該当すると判断した艦は、ガウ級攻撃空母ミデア級輸送機ギャロップ級陸戦艇ダブデ級陸戦艇パプア級補給艦パゾク級輸送艦以上の6種である。いずれも「機動戦士ガンダム」を初出とし、以後宇宙世紀を舞台とする作品に多々出演している名脇役だ。
 このうちガウ級、ミデア級は大型航空機、ギャロップ級、ダブデ級は陸戦艇という、宇宙世紀において「艦艇ではないが艦艇に準ずる扱いを受ける兵器」である。固有名を持つ艦としてはガウ改級アトバラナ(刻に抗いし者)、ミデア級アルテミス(THE ORIGIN)、ダブデ級ベムブル(F90)などが存在するものの、全ての艦に固有名が与えられたわけではないとしても不都合はないだろう。

 

 問題は、残りのパプア級とパゾク級だ。これらの艦種は先述の通り補給艦と輸送艦、つまり紛れもない艦艇である。しかも「0080」「0083」「MS IGLOO」などのアニメーション作品に登場する際にデザインのアレンジや設定の再解釈がなされているはず。にも拘らずなんと初登場から四半世紀以上が過ぎた「サンダーボルト」で「空母ドライドフィッシュが登場するまで固有の艦名を持つパプア級補給艦は存在しなかったのである!また、パゾク級輸送艦にものちに「クロスボーンDUST」で「R-08」が登場するが、これを艦名と言えるか怪しいところだ。
 こうなると公式側があえて艦名を付けていない可能性が出てくる。現実でも大日本帝国海軍の第一号型輸送艦が建造番号をそのまま艦名としていたように、ジオン公国軍にも補助艦艇には艦名を付けず、級名あるいは艦籍番号で呼称するという文化があったのではないだろうか。後に「THE ORIGIN」にて設定されたジオン公国軍輸送艦であるヤップとガブリルが、その名称を級名とも艦名とも明言されていないことも、この説を提唱するにあたってはありがたい事実だ。
 先述のドライドフィッシュに関しては、艦種を空母に変更したことで艦名が付けられたと考えられる。もしかすると建造時のミサイル戦艦としての艦名が一度抹消された後、復活したのかもしれない。

 

 似た立ち位置のヨーツンヘイム型試験支援艦(仮称)についても考えていこう。ヨーツンヘイム同型艦にはそれぞれ艦名が付けられているが、これには二つの可能性が考えられる。一つ目は単純に徴用される前の貨物船としての船名をそのまま使っている可能性。しかしこれは、ミサイル戦艦から改装されたはずのパプア級が艦名で呼ばれないことから否定できるだろう。もう一つは、補助艦艇ではなく「戦闘艦艇」として扱われている可能性だ。パプア級にも機銃は装備されているが、ヨーツンヘイム同型艦にはメガ粒子砲、つまり主砲が装備されている。これによりジオン公国軍内での扱いが戦闘艦艇と分類され、艦名を持つことが許されたとは考えられないだろうか。

 

 ここまでで、「ジオン公国軍の補助艦艇には艦名は付けられず級名で呼称されるのではないか」という結論に至った。では地球連邦軍ではどうだろか?面白いことに、コロンブス級補給艦には「小説版ガンダム」でL3という艦名が登場して以降「0083」のエッジ、「UC」のアラスカ等、それなりに艦名が設定されている。おそらくだが、モデルになったアメリカ軍が補助艦艇にも艦名を付けていることに由来する差だろう。ジオンは枢軸、連邦は連合という印象は、こういった細かい部分にも影響しているのかもしれない。